僕がまだ年若く、心に傷を負いやすかったころ、

父親がひとつ忠告を与えてくれた。

その言葉について僕は、
ことあるごとに考えをめぐらせてきた。

「誰かのことを批判したくなったときには、
 こう考えるようにするんだよ」と父は言った。

「世間のすべての人が、
 お前のように恵まれた条件をあたえられたわけではないのだと」

※村上春樹 翻訳ライブラリー「グレート・ギャツビー」
スコット・フィッツジェラルド著 初版発行日2006/11/10 中央公論新社

書き出しからここまでの文章は、
村上春樹さん訳の「グレート・ギャツビー」。

村上春樹さん自身が、
人生で出会った最も大切な小説というだけあり、
私自身、感銘を受けた書き出しだといえる。

小説家は書き出しに、全精力を集中するが、
何日も書き出せない場合もあるという。

それほど、書き出しは重要だということ。

私たちの書く文章は、小説のそれとは違う。

でも実際、あなたはこの記事を読み始めて、
吸い込まれていったに違いない。

私のブログ内でこの書き出しで書き始めれば、
ハッキリ言って、なんの話が始まるのかわからない。

しかし、こういったストーリー調の文章は、
村上春樹さんのようなプロフェッショナルで
なくても、グイグイ引き込まれてしまうもの。

つまり、読み手の感情を掴みやすくなる。

そこから展開する文章も、この掴みによって、
入り込む意識も変わり、受け入れられやすくなるもの。

あなたは今、

「そんな小説のようなストーリーは書けないし、
 その後のビジネスの話も絡められない。」

と思われているかもしれない。

でも、考えてみて欲しい。

ストーリーはあなたの中にもあるはず。

今行っているビジネスで、経験がほとんどなくても、

過去に仕事で体験したこと。
日常生活で体験したこと。

それらは、すべてあなただけのストーリーです。

もちろん慣れないうちは、あなたの体験でなくても、
ストーリー調の書き出しはできるので試してみてください。

■例えば、こういう逸話からはじめる書き出し。
2人の結末を変えた理由ってなに?有意義な人生と不幸な人生

■例えば、こういう映画のセリフからの書き出し。
ゼロ・グラビティでサンドラ・ブロックが魅せる生きることへの執着

こんな風に書き出すことで、読み手は文章に引き込まれ、
読み続けずにはいられなくなるもの。

どちらも途中から、
読者様に伝えたいテーマに変わっているはずです。

もちろん、毎回ストーリー調の
書き出しにしてくださいということではありません。

ひとつの書き出しパターンとして、
是非、活用してみてくださいね。